2024-01-05

過去の災害から学ぶ今日の課題

令和6年能登半島地震発生にあたり第2回市民防災講座 矢守講演を振り返る

(福知山自主防災ネットワーク 事務局)

 令和5年11月12日(日)に開催した第2回市民防災講座(主催 福知山自主防災ネットワーク)において、京都大学防災研究所教授・矢守克也先生に「「異常気象による災害から身を守るために」とのテーマで講演していただきました。

 講演では、「複合災害としての関東大震災」や「自然災害としての熱中症」、「災害時要支援者への取組の発展方向」など、過去から現在、そしてこの先へとつなげていくたいへん重要な考え方を教えていただきました。

 令和6年能登半島地震発生にあたり、改めて矢守先生の講演(「関東大震災100年」の部分)について振り返ってみました。

 矢守先生は「関東大震災100年」の中で、1923年の関東大震災、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東北大震災、2016年の熊本大地震の被害について説明されました。

関東大震災

 1923年9月1日に発生した関東大震災では10万人以上の犠牲者が出たが、その約9割が火災が原因で亡くなっている。地震が土曜日の正午前に起こり、昼食準備の火の使用で倒壊家屋に火災が発生しやすかったこと、さらに夕方以降、台風の通過による強風が吹き荒れ、倒壊をまぬがれた家屋にまで火災が広がったことなどが原因。
 火災の他、津波や土砂災害による犠牲者も出ている。
 発生した時間と場所、付随して起こる津波や土砂災害、さらには台風など他の自然災害が付け加わると被害がいっそう大きくなることがよく分かりました。
 関東大震災はまさしく「複合災害」であったことがよく理解できました。

阪神淡路大震災

 1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災では、犠牲者の約8割が建物倒壊による圧迫・窒息等が原因で亡くなっている。
※地震発生が午前5時46分であり、多くの方が就寝中であったことや「古い耐震基準」で建てられた建物の倒壊が主な要因。高齢者、特に女性の高齢者に死亡が多かったこと、男女とも20~24歳に比較的死者が多かったことも特徴。(厚生労働省「阪神淡路大震災による死亡の状況」)

東日本大震災

 2011年3月11日の東日本大震災では、犠牲者の約9割が津波による溺死。
※犠牲者の65%が60才以上の高齢者。高齢者の多い地域であり、在宅時に逃げ遅れた可能性を指摘(日経新聞)

熊本大地震

 2016年4月14日からの熊本大地震では、犠牲者の約8割が避難生活の中での「災害関連死」となっている。

 「災害関連死」について調べてみると次のような資料がありました。

「災害関連死」の例(内閣府)

  • 避難中の車内で74歳女性が、疲労による心疾患で死亡 
  • 78歳男性が、地震後の疲労等による心不全で死亡 
  • 83歳女性が慣れない避難所生活から肺炎状態となり、入院先の病 院で死亡 
  • 32歳男性が、地震による疲労が原因と思われる交通事故による死亡 
  • 43歳女性が、エコノミー症候群の疑いで死亡 
  • 88歳男性が地震による栄養障害及び持病の悪化等により死亡 
  • 83歳女性が地震のショック及び余震への恐怖が原因で、急性心筋梗塞により死亡と推定

過去の災害から学ぶ

 矢守先生の講演を踏まえ、以下のようなことを知りました。
  1. 関東大震災の被災状況を分析すると、「複合災害」により被害がいっそう大きくなったことが分かる。
  2. 阪神淡路大震災では、「古い耐震基準」の危険性を知ることができる。
  3. 東北大震災では、地震が引き起こす大津波の壊滅的な危険性、そして、在宅の確率の高い高齢者や障害がある方などの被害が大きくなることが分かる。
  4. 熊本大地震では、地震による「直接死」よりも避難生活の中での「災害関連死」が圧倒的に多かった。

「災害関連死」を防ぐ手立てを

 2016年の熊本大地震の経験から(本当はもっと以前の災害でも)「災害関連死」を防ぐ手立てが重要になっています。欧米先進国と比べても格段にレベルが低いと言われる避難所での生活改善や医療ケア、避難施設外にとどまる方への行き届いた支援など、過去の教訓を生かし改善して欲しいと思います。