2026-10-07

「災害関連死」研修会まとめ

福知山自主防災ネットワーク
2026年第1回 会員等研修会まとめ

開催日時 2026年10月1日 18:30~20:30
会場   福知山市防災センター2F研修室
参加者  47名


開会挨拶

仁張衛代表が開会あいさつを行い、仕事帰りの多数の参加への謝意。自身の避難所生活の経験から、水害の避難は比較的短期だが、地震では長期化し得ると指摘。「せっかく助かった命を失ってはならない」として、研修内容を各地域へ持ち帰るよう呼びかけた。

司会の足立幸恵副代表から進行説明。今回は質問・感想用紙を講演後に回収して質疑を行う形式。配布物はアンケートとチラシ類。情報保障のため会員3名が手話通訳に協力。


第1部 講演 「災害関連死について考える」

講師 京都府中丹西保健所長 阪倉 長平様
~いざという時に備える災害関連死と 避難行動要支援者対策の話~

講師は神戸市出身の消化器外科医。京都府立医科大学卒業後、府立医大消化器外科准教授、兵庫県の公立病院の院長・理事長を経て、2024年10月より京都府中丹西保健所長(福知山)。

近年の災害の特徴

大規模化・頻発化・複合化。限られた情報での迅速な判断と、多機関・多職種の連携が鍵となる。「訓練でできないことは実践でもできない」とし、日頃の訓練が不可欠。

災害関連死とは

建物倒壊などによる直接死ではなく、避難生活での持病悪化や心身の負担による死亡。予防できる点が最大の特徴。阪神・淡路大震災(死者約6,344人中、関連死921人)は、耐震化、自助・共助の重視、DMAT、広域医療搬送、災害拠点病院制度の原点となった。東日本大震災の関連死は3,794人、熊本地震は直接死50人に対し関連死221人、能登半島地震では直接死594人に対し災害関連死が364人と、死者の約6割が関連死。関連死が直接死を上回る例は少なくなく、大きな課題となっている。

関連死主な原因

  • 処方薬の途絶による持病の悪化
  • ストレスによる心血管疾患・メンタル不調
  • 不衛生な環境での感染症の流行
  • 炭水化物偏重の食事による栄養不足
  • 車中泊などによるエコノミークラス症候群

高リスク層は高齢者、持病のある人、要介護認定者

発生は発災後1か月以内に集中し、早期対応が重要。予防策は、食料・水・常備薬・歯磨きセットなどの備え、マスク着用、こまめな水分補給、適度な運動、バランスのよい食事、心のケア。

京都府・福知山市の取り組み

保健所に保健医療福祉調整本部を設置し、保健師、精神ケア(DPAT)、栄養士、リハビリ等の支援チーム派遣を調整。車中泊者も健康観察の対象。丹後での訓練では遠隔診療車を避難所で活用。福知山市では京都大学防災研究所の教授を座長とする検討会を約1年半実施。10月末に市の防災訓練を予定。

食料備蓄

農林水産省の資料に基づき、最低3日〜1週間分が目安。水は1人1日3リットル。普段の食品を多めに買い、使った分を補う「ローリングストック」を推奨。たんぱく質とビタミン(根菜、玉ねぎ等)を意識し、冬場は温かい食事のためカセットコンロ等の熱源を確保。

避難行動要支援者対策

法改正で個別避難計画の作成が努力義務化されたが、全国的には作成が遅れている。福知山市は人口約7万5千人に対し名簿登載者約3,000人、個別計画対象者約300人分がほぼ完成。移送・生活支援のサポーター制度も備え、全国でも先進的。

今後の課題は、夜間・豪雨・通信途絶・複合災害など想定外の条件を加えた多様な訓練。さらに、身体面に加え社会的(独居等)、地域的(浸水深、避難所までの距離)、交通手段の脆弱性を数値化すれば、重点支援地域が明確になる。大学等との共同研究で推進したい意向。

《 講演に対する質問と回答 他》

  • 熊本地震での保健所の関わりについて 超急性期は災害拠点病院のDMATが担当し、福知山市民病院も6名を派遣。京都府の調整支援チームは、現地の支援が充足したため派遣見送り。保健師チーム3〜4班が約1週間ずつ現地入りし、避難所・車中泊者の健康管理に従事。

  • 子ども向け防災イベントについて 医師会等主催の防災フェスティバルを例に、親子で遊びながら学ぶ形式が有効と回答。

  • ビタミン補給について 保存のきく根菜類、保存期間の長い野菜ジュースを推奨。

  • 難病患者アンケートの活用について 人工呼吸器など電源を要する人は個別対応とし、病院の場所を借りるなどで調整。ただし保険診療の制度上、入院扱いは不可。

他に、高齢化による近所の情報共有の難しさ、過疎地域の避難所整備などの感想を紹介。玄米食の質問には、脚気とビタミン不足の歴史を交えて栄養面の有用性を説明。


第2部 参加者による意見交換

冒頭、第2部司会の大西勝己事務局長から福知山市の「3日間は自力で生き抜く」方針と団体ニュース第16号を紹介。意見交換により出された主な意見は以下の通り。

  • 市危機管理室の職員~避難所環境の改善に取り組む訓練業務に直結する内容。
  • 子育て中の参加者~子どもと野島断層の保存館を見学。「福知山では災害は起きない」という子どもの感覚に危機感。地域の訓練に子どもの参加が少ない点も課題。
  • 公民館関係者~避難所運営ゲーム(HUG)の研修で運営の難しさを実感。具体的な対応事例の全国的な共有を要望。

  • 移送支援団体の代表~個別避難計画の移送を担当。ドライバー向け2日間の講習、福祉車両の借用の仕組みを紹介し、担い手の拡大を訴え。
  • 社会福祉協議会~福祉避難所サポーターの登録は約50名で、依然不足。制度の周知が課題。10月16日にフォローアップ研修を予定。

  • 自治会長~高校体育館の避難所にエアコンがなく、公民館の避難所も殺風景と指摘。市の回答は、高校は府の管轄、小中学校は順次エアコンを設置中。予防的な短期避難と長期避難では設営内容が異なるとの説明も。

  • まちづくり協議会の会長~農家が備蓄する1年分の米を災害時に貸し出す仕組みを、公立大学と実証中。

  • その他~太陽光パネルやリチウム電池の発火リスクに対し、行政による規制・補助を求める声。

最後に司会者がまとめ。市の名簿の3,000人は実態より少ないとの見方を示し、行政職員も被災する以上、公助には限界があると指摘。助けの7〜9割を担う地域の共助の重要性を改めて強調し、聴覚障害者との連携にも言及。


《今後の取組について》

事務局より以下のことを連絡

◇市危機管理室の10月の取組 車中泊避難体験 10月24日 ※申込終了

◇公立大学の防災連続講座 令和8年度第1回 

10月16日(金) 18:00 市民交流プラザ

◇福知山自主防災ネットワーク第11回公開研修会

11月12日(木)午後7時 市民交流プラザ3F交流スペース

福知山自主防災ネットワークの今年度年間研修テーマ「大規模災害に備える」に沿い、今回は直近の大規模災害の検証と私たちの備えを改めて問う。

(研修1)  

熊本地震の発災直後に現地調査を行った公立大学の大門准教授が、現地の状況と福知山市民の備えについて講演。

(研修2) 

直近の千葉県の水害を踏まえ、市危機管理室が水害への備えと発生時の行動を解説。

いずれも市民向け内容のため、多数の市民参加を呼びかける。


閉会挨拶

新たに事務局に加わった内記1丁目の桐村正博自治会長が閉会の挨拶。行政・医療関係者の尽力を知り心強いとの感想。1人だけの組があるなど共助の難しい現状にも触れ、組単位の活性化と共助の輪の拡大を呼びかけて閉会。


情報保障の取組

3人の会員の方に手話通訳をお世話になりました。